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治療困難な遺伝性疾患! 『網膜色素変性症』ってどんな病気?

治療困難な遺伝性疾患! 『網膜色素変性症』ってどんな病気?

『網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)』は、日本人の中途失明原因3位とされる難病です。その原因や症状も多岐にわたる網膜色素変性症とは、どのような病なのでしょうか? 今回はこの病気について詳しく解説します。

網膜の視細胞に影響を与える『網膜色素変性症』

眼底をおおう網膜は、視覚的な光情報を神経信号に変換する組織です。その役割からカメラのフィルムに例えられますが、現代的にいえばデジカメのCCDセンサーやCMOSセンサーに例えた方がわかりやすいかもしれません。
網膜には光や色、形を感知する1億個以上の視細胞が集まっています。この視細胞の働きにより、視神経から信号が脳中枢へと伝達され、私たちは“物を見る”ことができるのです。

網膜色素変性症_02

『網膜色素変性症』は、文字通り網膜に変成をともなうことで引き起こされる、遺伝性の疾患です。
網膜には『錐体(すいたい)細胞』『桿体(かんたい)細胞』という2種類の視細胞が存在しますが、それぞれの視細胞の働きは「色と視力」、「光と視野」を感知する機能に大別することができます。

錐体細胞は物体から反射した光の波長を読み取ることで“色”を認識することができますが、一方の桿体細胞は色の識別にほぼ関与しない代わりに“光”の感度が高いのです。
周囲の光が少なくなる(暗くなる)にしたがい、錐体細胞の働きは低下しますが、逆に暗いところでは桿体細胞が活発になり、暗い場所を見る能力を補おうと働きます。
私たちの目が、明るい場所では色を識別し、暗い場所では色の識別が困難になるのは、錐体細胞と桿体細胞のそれぞれの働きによるものなのです。

『網膜色素変性症』は、こうして進行する

網膜色素変性症の場合、もっとも初期にダメージを受けるのは、桿体細胞だといわれています。したがって初期の網膜色素変性症では、暗いところでモノが見えづらくなる『夜盲(やもう)』の症状が多く現れます。
しかし現代社会では暗い場所の多くが電灯で照らされているため、夜盲の症状に気付くことが遅れ、早期の発見にいたらない事例が多くあります。

網膜色素変性症_03

夜盲のほか、視野が狭くなる『視野狭窄(しやきょうさく)』『視力低下』が網膜色素変性症でもっとも多く現れる症状です。そのほかにも、光に対して過敏になる『羞明(しゅうめい)』や、色覚異常などの症状が現れることもあります。

ただし網膜色素変性症の進行は極めて個人差が大きく、中には老人になっても矯正可能な視力を維持している患者も存在します。
あらゆる病気にいえることですが、網膜色素変性症も早期の発見が重要となります。

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治療法の現在と未来の治療法

では、網膜色素変性症の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?
残念ながら、網膜色素変性症を根治するための治療法は開発されていません。網膜色素変性症で主におこなわれている治療は、「ヘレニエン製剤(暗順応改善薬)」や循環改善薬、ビタミンAなどの服用です。
その他にも、まぶしさを和らげるための「遮光眼鏡(光の波長を選択的に和らげるレンズ)」や、各種補助器具などを使用することがあります。
しかし、いずれも確実な効果が期待されるものではないため、進行を遅らせることを目的とした服薬や点眼薬、症状が進行した後の『QOL(Quality Of Life=生活の質)』を高めるための器具の使用が推奨されています。

網膜色素変性症_04出典:Optician – Gene therapy discovery gives hope for retinitis pigmentosa research

ただし治療法の研究は進められており、遺伝子治療や人工網膜、網膜幹細胞移植や網膜神経保護など、多岐にわたる研究が盛んにおこなわれています。また遺伝子工学の分野で、神経保護因子を目の中で多く作らせる研究が日本で始まっていることは、注目していいでしょう。
視細胞に関わる病気について全般的にいえることですが、すでに失われた細胞を回復させる治療法は現在では確立されていません。
まして遺伝性の疾患である網膜色素変性症を根治させる治療法は、遺伝子工学や再生医療などの新しい医療に期待を寄せるよりほかはないのかもしれません。

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【参考】
難病情報センター – 網膜色素変性症
http://www.nanbyou.or.jp/entry/196
日本眼科学会 – 目の病気 網膜色素変性
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_shikiso.jsp
視力回復の研究ノート – 網膜とは~視細胞が光を変換するフィルム
http://www.me-kaiteki.com/eye-mechanism/eye-structure/retina.html
EyeLife(遮光眼鏡):東海光学株式会社 – 網膜色素変性症
http://www.eyelifemegane.jp/disease/disease2.php
Optician – Gene therapy discovery gives hope for retinitis pigmentosa research
http://www.opticianonline.net/gene-therapy-discovery-gives-hope-retinitis-pigmentosa-research/

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iPS細胞で目の治療!?
『加齢黄斑変性』に希望を与える再生医療とは?

iPS細胞で目の治療!? <br />『加齢黄斑変性』に希望を与える再生医療とは?

山中伸弥博士のノーベル賞受賞により、一気に注目を集めたiPS細胞。そのiPS細胞を使った目の手術がおこなわれたことをご存じでしょうか?
iPS細胞を使った臨床研究として世界初の事例となったのは、欧米での失明率1位の難病『加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)』の手術でした。今後の進展が待たれるiPS細胞の研究を、手術内容を交えてご紹介します。

『加齢黄斑変性』ってどんな病?

『黄斑』とは網膜の中心部にある1.2mmから2mmほどの小さな部位で、この部位には色覚の基礎となる錐体細胞が高密度に集まっています。これらの黄斑組織は固視点からの光が集まる部位でもあり、『キサントフィル』という黄色の色素が集まることから『黄斑』という名前がつけられました。
その中心に当たる組織は「中心窩」と呼ばれており、視覚的な情報をあつかうすべての活動において、もっとも重要な領域であるといわれています。中心窩を含む黄斑は、文字通り網膜の中心に位置する重要な“コア”といえるのです。

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出典:MacuHealth

『加齢黄斑変性』とは、加齢などの要因によって黄斑がダメージを受け、さまざまな視覚異常を引き起こす病気のことです。黄斑の変性によって視野の中心が歪む、暗くなる、欠けるなどの症状がおこり、最悪の場合は失明にいたります。
なお、『加齢黄斑変性』による中途失明率は冒頭に記したように欧米での第1位、日本では第4位にとどまりますが、食生活や生活習慣の変化により、近年になって患者数が高まっている傾向にあるようです。

再生医療による『加齢黄斑変性』への挑戦

高橋政代博士をプロジェクトリーダーに、理化学研究所と先端医療振興財団の共同により世界初の臨床研究がおこなわれたのは、昨年9月12日のこと。移植1例目となる手術を受けたのは、既存の薬物治療などでは効果が確認できない重度の『滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性』を患う70代の女性でした。

この女性の場合、腕から直径4mmの皮膚を採取し、6種類の遺伝子を組み入れる方法でiPS細胞を作製。さらに特殊なたんぱく質を加えることで網膜組織の一種『網膜色素上皮』に変化させ、およそ10カ月の培養期間を経てシート状の移植組織を完成させました。
こうしてできあがった「網膜色素のシート」を長さ3mm、幅1.3mmの短冊形に加工し、病巣に移植するというのが、この時おこなわれた手術です。
ではなぜ、黄斑の病気である加齢黄斑変性の患者に『網膜色素上皮』を移植することになるのでしょうか?

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出典:Taylor Retina Center – Macular Degeneration

“ウエット型”と呼ばれる『滲出型加齢黄斑変性』の場合、その多くが色素上皮の下にある「脈絡膜」から発生した新生血管によって引き起こされます。
新しく発生したこの血管を『脈絡膜新生血管』と呼びますが、もちろん網膜の下に不要な血管が生じた病態は正常ではありません。この新生血管の発生の原因が、加齢による網膜色素上皮の機能低下によるものだと考えられているのです。

滲出型加齢黄斑変性は、この新生血管からの出血や滲出物により、視細胞機能がダメージを受けることによって起こります。したがって、滲出型加齢黄斑変性の治療としておこなわれる治療法の多くが、新生血管の拡大を抑えることを目的としたものとなります。いずれも視力の維持や病の進行を抑えることはできても、根治させることに有効な治療法とはいえないのが現状です。

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出典:The Japan Times – Japanese government panel OKs world’s first clinical research using iPS cells

そこで臨床研究としておこなわれたのが、異常をともなう新生血管を取り除き、代わりに培養した結膜色素のシートを移植するという手術です。
じつは、結膜色素上皮細胞は視細胞のメンテナンスにとって重要な役割を持っており、新生血管の原因となる、古くなった視細胞を消化する役目をもっています。
つまりiPS細胞由来の結膜色素シートを移植することで、加齢により衰えた細胞を再生することができるのです。まさに再生医療への応用が期待されているiPS細胞の利点をいかした手術といえるでしょう。

臨床試験その後

それから1年後、臨床手術1例目の被験者となった70代女性について、その後の経過が報告されました。それによると女性に合併症などの発生はなく、移植した色素細胞シートも所定の位置にとどまっており、術後の状態は良好とのことです。

今後、iPS細胞による加齢黄斑変性の治療はますます研究が盛んになることが予想されており、現在もiPS細胞由来の視細胞を含む『懸濁液(けんだくえき)』を病巣に注入し、生着させる治療法などの研究が進められています。
いずれにしろ、今後の再生医療に大きな一歩を進めた今回の移植手術の意義は大きく、根治治療の困難だった数多くの患者に大きな希望を与えています。

▼『加齢黄斑変性』については、こちらから
欧米では失明原因の第1位!日本人にも 増殖中の『加齢黄斑変性』ってどんな病気!?
中高年になると増える目の病気 『加齢黄班変性症』セルフチェック

【参考】
神戸新聞 – iPSから網膜細胞 世界初の移植手術実施 神戸
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201409/0007324118.shtml
株式会社ヘリオス – 加齢黄斑変性の治療方法開発
https://www.healios.co.jp/development/amd/
Logmi(ログミー) – iPS細胞がついに初の臨床試験へ! 担当医師が語る、”夢の技術”の現在
http://logmi.jp/15387

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