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生物がスケスケになってしまう「透明化」ってどんな技術?

生物がスケスケになってしまう「透明化」ってどんな技術?

出典:Not Ashamed of the Gospel – Have You Ever Felt Invisible? Here’s the Cure That Will Surprise You

SFの世界で繰り返し描かれるテーマの1つに「透明人間」があります。H.G.ウェルズが初めて描いた透明人間は、特殊な薬を飲むことで肉体を透明に変化させましたが、生物学の世界では、生物の内部構造を「見る」ために解剖という手段がもちいられてきました。

しかし近年になって、生物の姿を本当に透明化する技術が確立されつつあります。生物を透明にし、内部を可視化する技術とはどういうものなのでしょうか?

生体組織を透明化!マウスを丸ごと透明にできるって本当?

実は生体組織を透明化しようという試みは、100年以上も前からおこなわれてきました。その先駆けとされるのが、ドイツの解剖学者ヴェルナー・シュパルテホルツが発見した有機溶剤を用いた生物標本の透明化技術です。しかし、この方法では細胞が破壊されるため、蛍光タンパク質による細胞の可視化技術と組み合わせることができません。

そこでこれまでに、いくつかの透明化技術が開発されてきました。ウィーン大学の研究グループによる「3DISCO法」、理化学研究所(理研)による「SCA/E法」、スタンフォード大学による「CLARITY法」などです。

しかし、その研究をさらに進めて、マウスを個体レベルで透明化する技術が開発されました。それが理研と東京大学による研究グループの開発した、「CUBIC」と呼ばれる全脳イメージング解析で使用する“透明化試薬”をもちいた技術です。

研究グループは、試薬に含まれるアミノアルコールが「ヘム」と呼ばれる血液中の主要な色素を溶出することを発見し、それを利用して生態色素の脱色を促進する技術を開発したのです。

この技術により、生体組織による光の散乱と吸収を抑えることが可能となり、臓器を含むマウスの全身を丸ごと透明化できるようになりました。

しかもマウスを個体レベルで透明化することで、300億個といわれるマウスの細胞全てを平均化して観察することができます。これにより、一個体での生命現象と動作原理を対象とする、「個体レベルのシステム生物学」の実現に近づくことができるといいます。

動物だけじゃない!植物だって透明化できる!

透明化技術_02

透明化技術は、マウスだけにとどまってはいません。昨年2015年、名古屋大学は植物を透明化する試薬「Clear See(クリアシー)」の開発に成功しました。

すでにマウスを透明化する技術は開発されていましたが、その技術をそのまま応用しても動物と植物では構造が違うため、透明化することはできません。その原因の1つが、「クロロフィル(葉緑素)」の存在です。

透明化技術の主要な目的は蛍光タンパク質をもちいた細胞の観察ですが、クロロフィルはそれ自体が蛍光を放つ「自家蛍光」という性質を持っているため、これを取り除かなければ蛍光観察をおこなうことができません。そこで名古屋大学が開発した透明化試薬が「Clear See」だったのです。

名古屋大学はシロイヌナズナという植物をホルマリン固定したのちに、「Clear See」に4日間浸すという方法を用いました。するとシロイヌナズナの葉が透明化し、細胞核の1つ1つにいたるまでを詳細に識別できたのです。

この技術をもちいれば、植物を解剖することなく細胞レベルで蛍光観察することが可能となります。まさに、植物観察のブレイクスルーが生まれたといっても過言ではないのです。

透明化技術_03

いかがだったでしょうか?動物のみならず、植物さえもスケスケにしてしまう透明化技術ってすごいですね。

この技術の興味深い点は、生体組織を透明化することで、むしろ細胞レベルでの可視化が促進される点です。

SFの透明人間は肉体の屈折率を空気と等しくすることで不可視の存在となりましたが、生物学の世界では、透明になることでかえって可視化の対象となるようです。とても面白いですね。

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【参考】
理化学研究所 – マウスを丸ごと透明化し1細胞解像度で観察する新技術
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20141107_1/
理化学研究所 – 成体の脳を透明化し1細胞解像度で観察する新技術を開発
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140418_1/
名古屋大学 – 植物を丸ごと透明化し、中まで観察する新技術を開発
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20151028-2/
Chem Station – 脳を透明化する手法をまとめてみた
http://www.chem-station.com/blog/2013/04/post-517.html

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目の病気

2億人を失明から救った奇跡の薬「イベルメクチン」と「オンコセルカ症」

2億人を失明から救った奇跡の薬「イベルメクチン」と「オンコセルカ症」

出典:EurActiv.com – Ivermectin: A Nobel Prize medicine inaccessible to the world’s poorest

昨年2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さんは、『イベルメクチン』という薬で数多くのアフリカの人々を救った功績が評価されました。それまでは「オンコセルカ症」と呼ばれる風土病により、年間数万人という人々が失明していたそうです。

「オンコセルカ症」とは、いったいどんな病なのでしょうか?

人を失明に至らしめる『オンコセルカ症』

オンコセルカ症は和名を『河川盲目症』といい、回旋糸状虫(オンコセルカ)による感染症、いわゆるフィラリアの一種です。
メスのブユが人を刺すことで感染しますが、感染経路は複雑で、まずブユが感染者の体を刺すことで、感染者の末梢血管で活動するミクロフィラリア(前期幼虫)を体内に取り入れるのです。ブユの体内に移動したミクロフィラリアは脱皮をくり返すことで感染幼虫にまで成長し、ここで初めて、ブユの口吻(こうふん)を通じてヒトの皮膚の刺入孔から感染します。
ヒトの体内に移動したミクロフィラリアは体内で成虫となり、皮下結節(こぶ)を作ると、この中で10~15年も生き続けます。その間、メスの成虫は1日に1,000匹のミクロフィラリアを産むといわれています。

イベルメクチン_02
出典:A-WOL | Anti Wolbachia Consortium

オンコセルカ症に感染すると、激しい痒みや発疹、瘢痕(はんこん)が起こります。また、皮膚が肥厚することで“巻タバコの巻紙”のような皮質になり、結節周囲では色素変化が生じて“ヒョウ肌”と呼ばれる状態になってしまいます。
そしてオンコセルカ症の特徴の1つである失明ですが、ミクロフィラリアが眼の中で死ぬことで炎症を引き起こし、激しい充血の後に角膜に白濁(はくだく)が生じて失明に至ります。
オンコセルカ症による失明は世界の失明原因2位となっており、1,800万人におよぶ年間感染者の内、27万人が失明するといわれてきました。

2億人を失明から救った「奇跡の薬」

大村智さんの開発した『イベルメクチン』は、まさにオンコセルカ症の特効薬として登場した「奇跡の薬」でした。
腸管糞線虫症(ちょうかんふんせんちゅうしょう)の経口駆虫薬であるイベルメクチンは、孵化前の卵に効果はありませんが、幼虫であるミクロフィラリアには高い駆虫作用を持っています。
しかし、オンコセルカ症が引き起こす症状のほとんどはミクロフィラリアによるもののため、体内のミクロフィラリアを死滅させることで、長期にわたってミクロフィラリアの発生を抑制することができるのです。

このイベルメクチンの原型となる物質を、大村さんは静岡県にあるゴルフ場の土の中から発見しました。
大村さんが見つけたのは、「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス」と名付けられた放射菌の一種。その放射菌の中から「アベルメクチン」という化合物を発見し、それをもとに「イベルメクチン」が開発されたのです。
そしてこの薬の投与により、世界で1億数千万人の患者を数えたオンコセルカ症は劇的に減少し、今後10年以内には撲滅できるという見通しが公表されています。

アフリカだけじゃない!意外と身近だった『イベルメクチン』

まさに奇跡の薬であるイベルメクチンですが、実は意外と私たちの身近で役立っていることをご存じでしょうか?
現在、イベルメクチンは『ストロメクトール』という商品名で日本でも発売されており、沖縄や奄美大島で見られる糞線虫(ふんせんちゅう)という寄生虫の駆虫薬として使用されています。
また、ヒゼンダニというダニの寄生によって起こる、「疥癬(かいせん)」という皮膚感染症に特効的に作用する薬としても積極的に使用されています。疥癬は高齢者ほど症状が重篤化するといわれており、高齢化が進む日本にとってもまさに夢のような薬だったのです。

イベルメクチン_03

そして、愛犬家の方にとっても、イベルメクチンは身近にお世話になっている薬です。実は、犬のフィラリア予防薬として日本でもっとも使用されているのもイベルメクチンなのです。
思い当たる方は、愛犬のフィラリア予防薬として使用しているお薬の成分などを調べてみてください。主成分としてイベルメクチンが使用されていることがわかるかもしれません。また近年では、イベルメクチンが「胆管がん」にも効果が認められたという研究結果が発表されました。
大村さんは、アフリカのみならず、まさに世界中の人たちに素晴らしい恩恵を与えてくださったんですね!

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【参考】
メルクマニュアル医学百科 – オンコセルカ症
http://merckmanuals.jp/home/感染症/寄生虫感染症/オンコセルカ症.html
Eisai ATM Navigator – 河川盲目症
http://atm.eisai.co.jp/ntd/onchoserciasis.html
Yahoo! Japan – 科学者、二億人を救う。「元高校教師」が生み出した薬
http://ghitfund.yahoo.co.jp/interview_04.html
大村さん開発のイベルメクチン、胆管がんに効果 九大
http://www.asahi.com/articles/ASHDL5SB5HDLTIPE027.html

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