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“光の魔術師”レンブラントの眼の秘密 『立体盲』ってどんなもの?

“光の魔術師”レンブラントの眼の秘密  『立体盲』ってどんなもの?

『テュルプ博士の解剖学講義』レンブラント・ファン・レイン/1632年

レンブラント・ハルメンス・ファン・レインは、17世紀のオランダの画家であり、バロック絵画を代表する1人にも数えられる人物です。
明暗法という技法で知られるレンブラントは、その生涯で他に例を見ないほど数多くの自画像を残しています。そんなレンブラントの自画像から、視覚に関するある謎が提起されました。
「レンブラントは両眼視のできない『立体盲』だったのではないか?」というのです。今回は、レンブラントの眼の謎に迫ってみます。

モノを立体的に見るためには両目のバランスが重要

まずは『立体盲』の前に、私たちの目がどのように立体を把握しているのかを知る必要があります。
人の目は対象物に視線を合わせるために、近くを見る時には瞳を寄せ、遠くを見る時には瞳を外側に開くことを無意識の内におこなっています。つまり、対象物が近くなれば寄り目がちになり、遠ければ離れていくのです。
これを「輻輳(ふくそう)」、「開散(かいさん)」といいます。

この現象は、自分の指先をじっと見つめ、目元に近づけたり離したりすることでも確認することができます。指先をぐっと近づければ目は輻輳し、逆に離していけば開散することがわかると思います。こうして左右の目で見た2つの像を、脳は1つの映像として統合しているのです。

これを『両眼視』といいますが、私たちの目は両眼視が正常におこなわれていないと、モノを立体としてとらえることはできません。そして両眼視には、「同時視」と「融像(ゆうぞう)」という能力も関わっています。

「同時視」とは左右の目に映った映像を同時に視る能力、「融像」は左右の網膜に映った映像を1つの像としてとらえる働きのことです。
これらの能力がバランスよく機能することで、私たちの目は視覚上にあるものを立体的な像として結ぶことができているのです。

では、レンブラントの謎『立体盲』の場合はどうでしょうか?

巨匠の眼の謎は、こうして解かれた!

レンブラントが立体盲だったのではないかと指摘したのは、ハーバード大学医学大学院の神経科学者マーガレット・S・リビングストン教授です。2004年に『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌に教授が発表した短い論文は、レンブラントが「外斜視」による立体視困難者だったとする説を唱えるものでした。

リビングストン教授が着目したのは、レンブラントが描いた36枚の自画像(24枚の油彩画、12枚のエッチング)についてでした。それらを詳細に調べた結果、瞳孔および虹彩の位置が、ほぼ全ての自画像において横方向にずれていたことがわかったのです。

レンブラント_02
出典:PMC – Was Rembrandt Stereoblind?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2634283/

リビングストン教授ら研究チームが全ての肖像画の角膜(黒目)と視線の位置を計測した結果、レンブラントはなんと36枚の自画像の内、35枚を自ら外斜視として描いていたことがわかりました。さらに教授らは、そのズレを詳細に計測し、レンブラントの外斜視のずれのパターンを定量化することにも成功しました。

ここで「立体視」に立ち返りますが、立体視とは正常なバランス状態にある左右の網膜が、中心窩(ちゅうしんか)を基準にわずかなズレのあることから生じます。これを両眼視差と呼びますが、そのため片目では立体視は起こりません。そして立体視を阻害する原因の1つとされるのが「斜視」なのです。

レンブラントの場合、外斜視により立体視の困難な『立体盲』と呼ばれる症状だったと推定することができる。そして正常な両眼視が困難だったがために、脳が片目で多くの視覚的機能を果たすように切り替わっていたのではないか
それがリビングストン教授による結論だったのです。

レンブラントは『立体盲』だからこそ偉大な画家になれた?

いかがでしたか?読者の皆さんは、レンブラントが立体盲だったと信じることができたでしょうか?
ただし、リビングストン教授はこうも断っています。

“しばしば美術教師は、対象物を平面でとらえるために片目を閉じて観察するよう学生を指導します。したがって立体盲はハンディキャップではないかもしれません。それどころか、画家によっては資産にもなりうるのです”

引用:PMC – Was Rembrandt Stereoblind? (※英訳)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2634283/

つまりレンブラントは、立体盲という障がいがあったからこそ、二次元のカンバスを奔放に活用し、現代に語り継がれる偉大な画家たりえたのかもしれないのです。
偉大な画家に隠された“眼の謎”。今度レンブラントの絵を見る機会があれば、思い出してみてください。

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【参考】
PMC – Was Rembrandt Stereoblind?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2634283/
ビジョンケア [Hattori Opticians メガネの服部] – 視覚について
http://www.hattori-opt.com/vision/menokinou_sikaku/sikaku.html

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19世紀に誕生した新印象派が描く 美しい「点描画」の世界

19世紀に誕生した新印象派が描く 美しい「点描画」の世界

出典:Wikimedia commons

19世紀末から20世紀初めに活躍した画家、ジョルジュ・スーラをご存知ですか?彼が生み出した「点描画」と呼ばれる手法は、色彩の革命を起こしたとも言われるほど画期的なものでした。そんないまなお人々を魅了してやまない、点描画の世界についてご紹介します。

点描画を編み出した新印象派の創始者「ジョルジュ・スーラ」

絵画などを線ではなく点の集合やごく軽いタッチで表現する「点描画」。この手法が登場するまで、印象派と呼ばれる画家たちは、絵の具が混じることで色彩が濁って暗く見えてしまうことを解消するために、「筆触分割」と呼ばれる描画法を用いるのが主流でした。
「筆触分割」は色を混ぜずに絵の具を並べ置くような手法なのですが、スーラはそれを色彩理論や光学理論に基づき発展させ、独自の手法を編み出したのです。

スーラは、色を混ぜれば混ぜるほど暗くなる「加法混色」を避け、少しでも色を鮮やかに見せるために「並置加法混色」と「捕色対比」という方法を用いました。
「並置加法混色(視覚混合)」とはパレットで色を混ぜるのではなく、キャンバスなどに混ぜたい色を点で配置し、“目の中で混合された色彩を見せる”こと。たとえば青の点とオレンジの点は、近くで見るとそれぞれ異なる色に見えますが、遠ざかると混ざり合い、別の一つの色(茶色)に見えるという視覚効果があるのです。

一方の「捕色対比」は、色相環(色をリング状に順序立てて並べた表)の反対側に位置する2色(補色)を配色することです。下記の画像は「マンセル・カラー・システム」と呼ばれる、色相環です。この図でそれぞれ向かい合う色が、補色となります。

印象派_02
出典:Munsell 101 for the artist

たとえば黄緑色の芝生の合間に補色関係に近い紫を用いることで、お互いの色を強調し合う効果が生まれます。スーラは作品全体の調和をとりながら、補色関係にある色を配色することで、明るい色彩を演出することを可能にしたのです。

この手法はやがて新印象派と呼ばれる芸術活動へとつながっていきます。他にも、スーラの友人でもあるポール・シニャック、そして後にフィンセント・ファン・ゴッホも影響を受けたと言われているのです。
そんなスーラをはじめとする新印象派の画家たちの作品をいくつかご紹介します。

ため息が出るほどの美しさ。新印象派の作品とは?

印象派_01
出典:Wikimedia commons

「グランド・ジャット島の日曜日の午後」ジョルジュ・スーラ
こちらはスーラの代表作です。この絵の制作には下書きや習作を多数作るなど、念入りな下準備をしながら2年の月日をかけて描かれたそうです。

印象派_03
出典:Artble

「サーカス」ジョルジュ・スーラ
こちらはスーラの遺作となった作品です。サーカスのゆかいな雰囲気が見事にとらえられていますね!

印象派_4

「フェリックス・フェネオンの肖像」ポール・シニャック
スーラの友人でもあるポール・シニャックの作品です。モデルとなっているフェリックス・フェネオンはスーラの作品を見て「新印象派」と名付けた批評家です。
ちなみにスーラは31歳という若さでこの世を去っており、大作を仕上げるまでに長い時間を要したということもあり、作品の数は多くは残されていないそうです。
新印象派の作品を集めた展覧会は、定期的に行われています。機会があればぜひ実際の作品を間近で見て、そのすごさに触れてみてくださいね!

【参考】
日本文教出版‐高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸)
https://www.nichibun-g.co.jp/column/education/k-bi-museum/k-bi-museum064/
NHKONLINE‐ひるまえほっと “色彩の革命”点描画の世界
https://www.nhk.or.jp/shutoken/hirumae/athot/2013-11/1112.html
ウィキペディア‐
http://bit.ly/1ZLBrbm

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