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耳で「見る」、手で「読む」!?目の見えない人に学ぶ、私たちの脳のフシギ

耳で「見る」、手で「読む」!?目の見えない人に学ぶ、私たちの脳のフシギ

出典:Sobre a Deficiência Visual

文字を読むことや景色を見るのは、「目」ですること――そう考えている人は多いのではないでしょうか。

しかし、「見る」ことは、本当に目だけがおこなう機能なのでしょうか?

実は、目の見えない人でも別の器官を使って見たり、読んだりできる方法があります。キーワードは、「脳」と「進化」です。

今回は、目の見えない人の感覚から、私たちの脳のフシギをご紹介します!

音で世界を「見る」エコーロケーションとは?

エコーロケーション_02
出典:Wikimedia Commons

米カリフォルニア州在住の男性ダニエル・キッシュさんは、先天的な目の病気のため、生後1歳で全盲となりました。しかし50歳になった彼は、自転車に乗ったり1人でトレッキングに行ったりすることができます。それはなぜでしょうか?

実は、彼は「舌打ち音」を出して、その反響音で空間を把握しているのです。

「エコーロケーション(反響定位)」と呼ばれるこの認識方法は、イルカやコウモリが使うことで知られています。

舌打ち音で放たれた音波が周りの物体に当たって、かすかな反響が返ってきます。

それを耳でとらえて、脳でイメージに変換するのです。

エコーロケーション_03
出典:slate.com

キッシュさんは、エコーロケーションをこう表現します。

“いわば、周囲の環境と対話しているようなものですよ。舌打ち音を立てるたびに、弱いカメラのフラッシュがたかれる感じです。それを元に半径数十メートルの三次元イメージを組み立てます。”

(引用:音で世界を「見る」-ナショナルジオグラフィック日本版

「視覚は、目ではなく脳にある」

エコーロケーション_04
出典:health-innovations

キッシュさんは、これまで世界中の視覚障がい者にエコーロケーションを教えてきました。彼によれば、多くの人がおどろくほどすぐに効果を得られるそうです。

キッシュさんはこう語ります。

“人間は本来、エコーロケーションの能力を秘めているのではないでしょうか。照明のない大昔、人類はこの力を駆使していたのかもしれません。おそらく神経系の「ハードウェア」は元からあって、私はその起動法を見つけただけ。視覚とは目ではなく、脳の中にあるのです。”

(引用:音で世界を「見る」-ナショナルジオグラフィック日本版

“あなた方の脳と同様に、情報から像を結ぶのです。(中略)これは私が盲目であることを通じて学んだ「見る方法」なのです。困難という名の未知の暗闇の中を歩んでいくために。これによって、ついたあだ名は「すごいバットマン」です。(中略)でも、これがそんなに「すごい」ことでしょうか?私は目を使わずに、脳を使うまでのことです。”

(引用:How I use sonar to navigate the world-TED

こうした脳のはたらきについては、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の著者である伊藤亜紗さんが「進化」という言葉で次のように説明しています。

“何らかの器官を失うことは、その人の体に、「進化」にも似た根本的な作り直しを要求します。リハビリと進化は似ているのです。生物は、たとえば歩くために使っていた前脚を飛ぶために使えるように作り替えました。同じように、事故や病気で特定の器官を失った人は、残された器官をそれぞれの仕方で作り替えて新たな体で生きる方法を見つけます。”

(引用:『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗(光文社新書)P113-114)

点字は「触る」のではなく「読む」感覚?

エコーロケーション_05
出典:Wikimedia Commons

「点字」についても、実は似たようなことがいえます。

前提として、目の見える人が抱きがちな「視覚障がい者=点字」というイメージが、実は間違っているという事実があります。

平成13年の厚生労働省の調査では、点字の識字率は視覚障がい者のうちでほんの1割程度です。

これには主に2つ理由があります。

1つ目は、音声認識ソフトの普及などで若い世代に「活字離れ」ならぬ「識字離れ」が進んでいることです。

そして2つ目の理由について、前述の伊藤さんはこのように説明しています。

“点字を純粋な触覚の働きとみなすのは、実はどうやら間違っているらしい。(中略)点字は「触る」ものではなく「読む」ものなのです。(中略)見えない人が点字を読むときには、脳の視覚をつかさどる部分、すなわち視覚皮質野が発火しているのだそうです。(中略)見えない人では視覚的な情報を処理する必要がなくなるため、視覚野が視覚以外の情報処理のために転用されるようになるのだそうです。”

(引用:『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗(光文社新書)P99-100)

つまり、見えない人は目ではなく、手で「読む」ことをしているわけですね。これも、一種の「脳の進化」といえそうです。

エコーロケーション_06
出典:Utah Physicians for Healthy Environment

だからといって「視覚障がい者はすごい!」とはいわないで

このように、目の見えない人は独自の脳の使い方を身につけています。これは「見える」人にとってはおどろきです。

しかし前述の伊藤さんは、「だから視覚障がい者はすごい!」と誉めることには問題があるといいます。

“ひとつめの問題は、「すごい!」という驚嘆の背後には、見えない人を劣った存在とみなす蔑(さげす)みの目線があることです。(中略)無意識のレベルで「見えない人は見える人にできることができないはずだ」と考えていることを、見えない人は感じとっています。(中略)二つ目は、見えない人のイメージを固定してしまうことです。(中略)私たちはつい「見えない人」とひとくくりにしてしまいますが、実はその生き方、感覚の使い方は多様なのです。”

(引用:『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗(光文社新書)P85-87)

当事者である前述のキッシュさんも、次のように語っています。

“目が見えないことそのものよりも、「盲目」の与える印象の方がずっと、目が不自由な人々にとっては恐ろしいものです。(中略)自分やあなたの愛する人の目が見えなくなることについて、考えてみて下さい。その恐怖とは、私たち多くの者にとって、理解出来ないことです。(中略)私たちは恐れによって、困難を前にすると動けなくなります。”

(引用:How I use sonar to navigate the world-TED

そこで、伊藤さんは「すごい」ではなく「おもしろい」ということを提案しています。自分とは違ったやり方でものを「見る」相手のことを「おもしろい」と感じられれば、目の見える人も見えない人も、お互いに新しい発見があるというのです。

そうやって、「目」に対する思い込みから自由になってみるのも、おもしろいですね!

▼「目の見えない世界」については、コチラもオススメ!
見えない世界で見えるものとは? 視覚障がい者の美術鑑賞
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【盲目のピアニスト】辻井伸行 世界的ピアニストの生い立ちに迫る

▼失明の原因、第1位は…
目のトラブルについて~緑内障~(ロート製薬 商品情報サイト)

【参考】
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗(光文社新書)
視覚障がい者の現状と音声案内のニーズ-総務省
http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokuriku/resarch/houkoku/1.1.pdf
音で世界を「見る」-ナショナルジオグラフィック日本版http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20130620/355092/
How I use sonar to navigate the world-TED
https://www.ted.com/talks/daniel_kish_how_i_use_sonar_to_navigate_the_world/transcript?language=ja
Blind man uses his ears to see -CNN.com
http://edition.cnn.com/2011/11/09/tech/innovation/daniel-kish-poptech-echolocation/

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19世紀に誕生した新印象派が描く 美しい「点描画」の世界

19世紀に誕生した新印象派が描く 美しい「点描画」の世界

出典:Wikimedia commons

19世紀末から20世紀初めに活躍した画家、ジョルジュ・スーラをご存知ですか?彼が生み出した「点描画」と呼ばれる手法は、色彩の革命を起こしたとも言われるほど画期的なものでした。そんないまなお人々を魅了してやまない、点描画の世界についてご紹介します。

点描画を編み出した新印象派の創始者「ジョルジュ・スーラ」

絵画などを線ではなく点の集合やごく軽いタッチで表現する「点描画」。この手法が登場するまで、印象派と呼ばれる画家たちは、絵の具が混じることで色彩が濁って暗く見えてしまうことを解消するために、「筆触分割」と呼ばれる描画法を用いるのが主流でした。
「筆触分割」は色を混ぜずに絵の具を並べ置くような手法なのですが、スーラはそれを色彩理論や光学理論に基づき発展させ、独自の手法を編み出したのです。

スーラは、色を混ぜれば混ぜるほど暗くなる「加法混色」を避け、少しでも色を鮮やかに見せるために「並置加法混色」と「捕色対比」という方法を用いました。
「並置加法混色(視覚混合)」とはパレットで色を混ぜるのではなく、キャンバスなどに混ぜたい色を点で配置し、“目の中で混合された色彩を見せる”こと。たとえば青の点とオレンジの点は、近くで見るとそれぞれ異なる色に見えますが、遠ざかると混ざり合い、別の一つの色(茶色)に見えるという視覚効果があるのです。

一方の「捕色対比」は、色相環(色をリング状に順序立てて並べた表)の反対側に位置する2色(補色)を配色することです。下記の画像は「マンセル・カラー・システム」と呼ばれる、色相環です。この図でそれぞれ向かい合う色が、補色となります。

印象派_02
出典:Munsell 101 for the artist

たとえば黄緑色の芝生の合間に補色関係に近い紫を用いることで、お互いの色を強調し合う効果が生まれます。スーラは作品全体の調和をとりながら、補色関係にある色を配色することで、明るい色彩を演出することを可能にしたのです。

この手法はやがて新印象派と呼ばれる芸術活動へとつながっていきます。他にも、スーラの友人でもあるポール・シニャック、そして後にフィンセント・ファン・ゴッホも影響を受けたと言われているのです。
そんなスーラをはじめとする新印象派の画家たちの作品をいくつかご紹介します。

ため息が出るほどの美しさ。新印象派の作品とは?

印象派_01
出典:Wikimedia commons

「グランド・ジャット島の日曜日の午後」ジョルジュ・スーラ
こちらはスーラの代表作です。この絵の制作には下書きや習作を多数作るなど、念入りな下準備をしながら2年の月日をかけて描かれたそうです。

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出典:Artble

「サーカス」ジョルジュ・スーラ
こちらはスーラの遺作となった作品です。サーカスのゆかいな雰囲気が見事にとらえられていますね!

印象派_4

「フェリックス・フェネオンの肖像」ポール・シニャック
スーラの友人でもあるポール・シニャックの作品です。モデルとなっているフェリックス・フェネオンはスーラの作品を見て「新印象派」と名付けた批評家です。
ちなみにスーラは31歳という若さでこの世を去っており、大作を仕上げるまでに長い時間を要したということもあり、作品の数は多くは残されていないそうです。
新印象派の作品を集めた展覧会は、定期的に行われています。機会があればぜひ実際の作品を間近で見て、そのすごさに触れてみてくださいね!

【参考】
日本文教出版‐高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸)
https://www.nichibun-g.co.jp/column/education/k-bi-museum/k-bi-museum064/
NHKONLINE‐ひるまえほっと “色彩の革命”点描画の世界
https://www.nhk.or.jp/shutoken/hirumae/athot/2013-11/1112.html
ウィキペディア‐
http://bit.ly/1ZLBrbm

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