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人工的に“視覚を創る”ってどういうこと?『人工視覚』の技術に迫る!

人工的に“視覚を創る”ってどういうこと?『人工視覚』の技術に迫る!

厚生労働省が2011年に実施した「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」によると、大小さまざまな視覚障害で身体障害者手帳を持っている人は約32万人。そのような目の見えない・見えにくい方のために長年世界中で研究されているのが、人工的に視覚を創る『人工視覚』のシステムです。

人工視覚とはいったいどういうものなのか、詳しく見ていきましょう。

ものを見るためのカギは「電気信号」にあり!

人工視覚_02

私たちの目がものを見る仕組みには、体のあらゆる要素が関係しています。その中でも特に重要だといえるのが、目から脳へ送られる「電気信号」です。

ものが光を反射する

目が光を感じ取る

網膜にある視細胞が感じ取った光を「電気信号」に変換し、脳へ送る

脳がものを認識する

簡単にいうと、このような流れで私たちの目はものを認識しています。

人工視覚の基本的な考え方

人工視覚_03

人工視覚とは、目から脳へ送られる電気信号に着目した研究です。

病気などによって神経組織の一部が機能しなくなることで、電気信号が発生しなかったり伝わらなかったりすると、視覚にも支障をきたすためものを認識できなくなります。そこで、現在機能している神経組織を活かしつつ、網膜など視覚に関係する神経組織を人工物で刺激して、視覚の機能をサポートするのが人工視覚です。

人工視覚は、「人工視覚システム」「人工眼」とも呼ばれます。しかし、人工視覚といっても、「何かを体に埋め込むだけでOK」というような簡単な仕組みではありません。神経に“刺激”を与えるものを体に埋め込み、体の外にも機器を装着する必要があります。

人工視覚にはいろいろなタイプがある!

人工視覚_04

基本のアイデアをもとに、世界中で仕様の異なる人工視覚が考え出されています。ここでは、人工視覚を“刺激する先”に分けてご紹介します。

●脳刺激型

脳の視覚野(視覚をつかさどる領域)を刺激するのが脳刺激型です。目から得た情報が到達する最終地点である脳に、電極アレイという電極が複数ついた装置を埋め込んで脳を刺激することで、視覚を得ようとする試みです。

脳刺激型人工視覚の歴史は古く、近代的な研究は1960年代から行われてきました。しかし、「電極アレイを脳に埋め込む」という大掛かりな手術が必要となるため、現在では安全性の問題も指摘されています。

●視神経刺激型

眼球から脳へつながる視神経を刺激し、視覚を得ようとする試みです。

ものを認識するのに必要な視神経は、神経節細胞の神経線維が束になったものから構成されています。この視神経に電極アレイをカフのように巻きつけて刺激するタイプや、目の中から視神経へ向かってワイヤー型の電極をつないで刺激するタイプがあります。

●網膜刺激型

眼底を薄く覆っている網膜を電極アレイで刺激する試みです。網膜刺激型は、網膜の上側、網膜の下側、あるいは、眼球のもっとも外側に位置する強膜、のどの部分に電極を埋め込むかによって、電気刺激の方法や手術の難易度が異なります。

●そのほか

ほかにも、バイオハイブリッド型、化学刺激型と呼ばれる最新の人工視覚や、iPS細胞を使って網膜自体の再生を図る研究もなされています。

人工視覚の技術は実用化に向けて発展中

現在の人工視覚の技術で見えるのは、通常の視機能を持つ人が見ているような光景ではなく、光の点の集まりです。電光掲示板のようなイメージというとわかりやすいでしょう。

人や物体が一部の光を遮って影が生まれ、明暗や動きが判断できるようになります。明暗がぼんやりとわかる程度の視覚情報を得られるだけでも、視覚障害のある方にとっては、これまでより行動可能な範囲が広がり、独立してできるようになることも増えるメリットがあるのです。

人工視覚は現在、実用化に向けて少しずつ進歩している状況です。視覚に何らかの障害を抱えている方にとって、希望ともいえる人工視覚。その動向に今後も要注目です!

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(参考)
株式会社ニデック|人工視覚のポイントを押さえよう
http://www.nidek.co.jp/company/artificial_sight/about_artificial_sight/point.html
東京工業大学 工学院機械系科 ライフエンジニアリングコース 八木研究室|人工視覚プロジェクト
http://www.io.mei.titech.ac.jp/research/retina/index-j.html
厚生労働省|平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa.html
公益社団法人 日本眼科医会|よくわかる緑内障―診断と治療―
http://www.gankaikai.or.jp/health/49/02.html
一般社団法人 日本人工臓器学会|感覚系における人工臓器-人工網膜
http://www.jsao.org/image/custom/pdf/41_3PDF/41_202.pdf

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見えない世界で見えるものとは? 視覚障がい者の美術鑑賞

見えない世界で見えるものとは? 視覚障がい者の美術鑑賞

「目が不自由な人間は美術鑑賞を楽しむことはできない」、そう思い込んでいませんか? 世界各国で視覚障がい者を対象におこなわれている、美術鑑賞の新しい取り組みについてご紹介します。

健常者の言葉からイメージを膨らませ、作品を想像して楽しむ美術鑑賞ツアー

これまで美術館から遠ざかっていた視覚障がい者を対象とした、美術鑑賞ツアーが話題を集めています。

埼玉県が主催する『視覚障がい者と楽しむ美術作品鑑賞会』では、作品を見る前に同じ参加者である健常者と視覚障がい者でグループを作ります。
2名の健常者と1名の視覚障がい者で1組となり、作品の前で健常者が見たことや思ったことを自由に述べることからはじまります。それを聞いた視覚障がい者が「それはどんな色? どんな形?」などと質問しながら、頭の中で作品のイメージを膨らませていくのです。

視覚に頼るのではなく、言葉を通じて互いに想像力を働かせながら一緒に楽しむ鑑賞スタイルです。そのため、グループ内のコミュニケーションがとても重要になります。
ガイドする側、される側という関係ではなく、ボランティアという立場でもなく、あくまで一緒に楽しむ仲間という関係性を大切にしているそうです。

視覚障がいと美術_02

また見える側にとっても、感じたことを言葉に置き換えることで、目で見ているだけでは気づかなかったところが見えてきたり、他人の言葉から新たな見方に気づかされたりと、発見が多いそうです。
美術館で出会った健常者と視覚障がい者が作品について語り合う。とてもステキな時間だと思いませんか?

イタリアの浮き彫り技法を活用した、手で触れて鑑賞できる立体絵画

イタリアの北部に位置するエミリア=ロマーニャ州には、視覚障がい者のために作られた“触る”美術館『アンテロス』があります。

視覚障がいと美術_04
Museo Tattile ANTEROS – Istituto Cavazza

イタリアの伝統的な技法である浮き彫りの技術を活用し、平面にすぎなかった絵画を半立体的な翻案にするというシステムを1994年に誕生させた美術館です。この立体絵画をもちいることで、言葉による説明だけではわからなかった絵画の遠近感や空間構成を、視覚障がい者は手で触れることで理解できるようになったのです。

まず、視覚障がい者は練習用ボードに触れ、絵画鑑賞の基礎となる空間感覚(遠近法など)や形状の読み方を習得します。習得できたところで、立体絵画に触れての鑑賞です。
アンテロス美術館ではこうした作品が30点ほど所蔵されています。イタリアの作品を中心に、『モナリザ』や『ヴィーナスの誕生』など、古代から現代まで世界的に有名な名画ばかりです。

イタリアでは国をあげて、視覚障がい者の芸術鑑賞を支援しているのです。

視覚障がいと美術_03

日本にも視覚障がい者のための美術館は存在します。
児童劇作家である故・村山亜土氏によって東京都渋谷区松涛に創設された美術館『ギャラリーTOM』です。

「ぼくたち盲人にもロダンをみる権利がある」

生まれながらにして視覚に障害のあった村山氏の息子が発したこの言葉がきっかけとなり、村山氏はギャラリーTOMを誕生させました。
1984年の創設以来、『TOUCH ME ART(触れるアート)』をコンセプトに、視覚障がい者が彫刻に触れて美術体験をできる施設として人気を博しています。今年で32周年を迎えた現在も、来場者の途絶えない美術館です。

日本を代表する葛飾北斎の浮世絵が、3Dアートで触れる時代に!

日本でもついに、触れる彫刻だけでなく、触れる立体アートが誕生しました。
視覚障がい者のための美術鑑賞プロジェクトとして、かの有名な葛飾北斎の浮世絵『神奈川沖浪裏』を3Dプリンタで再現することに成功したのです。

視覚障がいと美術_04

このプロジェクトは国立特別支援教育総合研究所の大内進氏の研究に、3Dデジタルツールの販売などを手がけるケイズデザインラボの協力によって実現しました。富士山をバックに巨大な波が描かれた名作を、波の一つひとつにいたるまで丁寧に仕上げ、今にも波がせり出してきそうな迫力ある3Dアートに仕上がっています。
視覚障がい者が言葉でしか知ることができなかった葛飾北斎の世界観を、実際に手で触れて鑑賞できるのです。

視覚障がい者の美術鑑賞の取り組みは日本でも着実に広まっています。少しでも興味を持った方は各自治体やボランティアグループが主催する美術鑑賞ツアーに参加してみてはいかがでしょうか?
今よりもっと美術館を身近なものに感じられるはずです。

▼視覚障がい者にまつわる記事はコチラ
社会人ならマスターしたい! 視覚障がい者の正しい手助け方

視覚障がい者スポーツはこんなに奥深い! パラリンピック先取りガイド

社会人なら知っておきたい 点字ブロックの豆知識

【参考】
バリアフリーの美術鑑賞 – ウィーン – 行くなら今!
https://www.wien.info/ja/travel-info/accessible-vienna/accessible-museums
視覚障害者と楽しむ美術作品鑑賞会 – 埼玉県ホームページ
http://archive.pref.saitama.lg.jp/site/festival/kansyokai.html
ギャラリーTOM Gallery TOM
http://www.gallerytom.co.jp/
イタリアにおける視覚障がい児者のための絵画鑑賞の取組
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-241/d-241_06_02.pdf

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