• HOME
  • エンタメ
  • 見えない目に光をともす 人工眼『バイオニック・アイ』が未来的すぎる
読み物

見えない目に光をともす 人工眼『バイオニック・アイ』が未来的すぎる

見えない目に光をともす 人工眼『バイオニック・アイ』が未来的すぎる

出典:Salud Medicinas – Realizan primer trasplante de ojo biónico en caso de degeneración macular

“21世紀”という言葉は、かつてのSF(サイエンス・フィクション)の世界では“近未来”という言葉と同じ意味を持っていました。
今では当たり前のように接しているIT環境をはじめ、想像にすぎなかったSFの世界が現実となった例は数知れません。そしてそれは、生物工学の世界でも同じです。
『バイオニック・アイ』と呼ばれる人工の眼で、盲目の人でも目が見えるようになる――。そんな世界が現実のものになろうとしています。

バイオニック・アイは全盲患者に希望の光を与えるか!?

人工眼「バイオニック・アイ」_02
出典:Third Monk – Argus II Gives Sight to the Blind (Video)

人工の眼『バイオニック・アイ』によって全盲状態から回復したのは、アメリカ中西部ミネソタ州に暮らすアレン・ズデラートさんという男性です。
現在68歳になるアレンさんは、定年を迎える前は世界的な化学・電気素材メーカー『3M』で研究をおこなう科学者でした。

そんなアレンさんを襲った目の病は、『網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)』という疾患でした。中途失明の3大原因の1つとされる網膜色素変性症は、長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性していく眼科疾患です。
アレンさんの場合は、50歳代の頃から徐々に視野が欠けていき、今から10年前には全盲状態にまで進行していました。そんなアレンさんを救ったのが『バイオニック・アイ』というテクノロジーだったのです。

視覚を電気信号に変える生物工学の“眼”

アレンさんに採用されたのは、米セカンド・サイト社の開発した『アーガスII』という人工網膜システムです。アーガスIIは、すでにアメリカの食品医薬品局(FDA)による認可を受けており、アレンさんで15人目の採用例となりました。
しかしアーガスIIは、人工網膜を移植することで、裸眼による視力が回復するというシステムを持っているわけではありません。

人工眼「バイオニック・アイ」_03
出典:The Choroideremia Research Foundation – Argus II Available for CHM Patients

アーガスIIは、光受容体となる特殊なインプラントを眼球内に移植し、外部デバイスとなる“ヴィデオ・プロセッシング・ユニット(VPU)”を通して人工網膜に映像を転送するというシステムです。アーガスIIで視覚情報を認識するためにはビデオカメラを搭載した専用のサングラスとVPUが必要となり、そこから送られる映像を受信するために、人工網膜が必要になるというわけです。

人工眼「バイオニック・アイ」_04
出典: Future Health Sistem – Argus II Retinal Prosthesis System

人工網膜には光受容体が搭載されており、VPUによって送信されたデジタル信号を受信することで、視覚情報を再現することができます。
しかし現在のところ、人工網膜が実像を結ぶ情報は50~60ピクセルほどの、非常に限られたイメージに過ぎません。しかもその映像はモノクロで、視力に換算すると0.01ほどのきわめて乏しいレベルにとどまっています。

バイオニック・アイがもたらす未来

人工の眼『バイオニック・アイ』は、本当に視覚障害者にとって希望の光となるのでしょうか?
実はアーガスIIにとどまらず、バイオニック・アイの研究は世界中でおこなわれています。例えば、オーストラリアの研究機関「バイオニック・ヴィジョン・オーストラリア(BVA)」も独自開発によるバイオニック・アイの早期プロトタイプの移植に成功していますし、同じくオーストラリアに本部をおくモナシュ大学による研究グループでも『モナシュ・ビジョン・システム(MVS)』と呼ばれるバイオニック・アイの研究が続けられています。

人工眼「バイオニック・アイ」_05
出典:33rds Square – Bionics Breakthrough As Eye Implant Prototype Tested

アーガスIIでの施術対象は網膜色素変性症の患者にとどまっていますが、BVAではその対象には『加齢黄斑変性症』の患者も含まれ、またMVSでは『糖尿病網膜症』や『緑内障』を含む一般的な途中失明患者の全般にまで、その臨床対象を広げようとしています。

アーガスIIを装着する以前は、10年にわたりアレンさんの目の代わりとなっていたのは、妻のカルメンさんでした。アーガスIIによる視力回復は、まだ人の顔を判別するまでにはいたっていません。それでも、アレンさんはカルメンさんを見てこのように話しました。
「妻を見つけるのは簡単だったよ。なぜなら、彼女はこの部屋の中でもっとも美しかったから」
バイオニック・アイの実用化には、まだまだ長い時間が必要となるでしょう。しかし、少なくともアレンさんには、バイオニック・アイが光をもたらしてくれたようです。

▼SFのような手術なら、こちらもオススメ!
目の中に入れるコンタクト!? レーシックに代わる選択肢『ICL』手術とは?

iPS細胞で目の治療!? 『加齢黄斑変性』に希望を与える再生医療とは?

これでドライアイとさよなら!?涙腺刺激で涙をうながす画期的なインプラント

▼視覚の不思議を疑似体験するなら?
視力を矯正できない“見えにくい人” =『ロービジョン』の視覚を疑似体験

色のない世界ってどんなもの? 色覚異常を持つ人のモノの見え方を疑似体験

【参考】
Second Sight
http://www.secondsight.com/
NBC News – Allen Zderad Sees Wife for First Time in Decade After ‘Bionic’ Eye Implant
http://www.nbcnews.com/news/us-news/allen-zderad-sees-wife-first-time-decade-after-bionic-eye-n311216
Bionic Vision Australia
http://bionicvision.org.au/
Monash Vision Direct to Brain Bionic Eye
http://www.monash.edu.au/bioniceye/index.html
Medエッジ – 「バイオニック・アイ」で視力回復も、網膜色素変性症で効果
https://www.mededge.jp/b/tech/11487

目ディア

この記事が気に入ったら
いいね!してね♪

目の病気

iPS細胞で目の治療!?『加齢黄斑変性』に希望を与える再生医療とは?

iPS細胞で目の治療!?『加齢黄斑変性』に希望を与える再生医療とは?

山中伸弥博士のノーベル賞受賞により、一気に注目を集めたiPS細胞。そのiPS細胞を使った目の手術がおこなわれたことをご存じでしょうか?

iPS細胞を使った臨床研究として世界初の事例となったのは、欧米での失明率1位の難病『加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)』の手術でした。今後の進展が待たれるiPS細胞の研究を、手術内容を交えてご紹介します。

『加齢黄斑変性』ってどんな病?

『黄斑』とは網膜の中心部にある1.2mmから2mmほどの小さな部位で、この部位には色覚の基礎となる錐体細胞が高密度に集まっています。これらの黄斑組織は固視点からの光が集まる部位でもあり、『キサントフィル』という黄色の色素が集まることから『黄斑』という名前がつけられました。

その中心に当たる組織は「中心窩」と呼ばれており、視覚的な情報をあつかうすべての活動において、もっとも重要な領域であるといわれています。中心窩を含む黄斑は、文字通り網膜の中心に位置する重要な“コア”といえるのです。

画像2
出典:MacuHealth

『加齢黄斑変性』とは、加齢などの要因によって黄斑がダメージを受け、さまざまな視覚異常を引き起こす病気のことです。黄斑の変性によって視野の中心が歪む、暗くなる、欠けるなどの症状がおこり、最悪の場合は失明にいたります。

なお、『加齢黄斑変性』による中途失明率は冒頭に記したように欧米での第1位、日本では第4位にとどまりますが、食生活や生活習慣の変化により、近年になって患者数が高まっている傾向にあるようです。

再生医療による『加齢黄斑変性』への挑戦

高橋政代博士をプロジェクトリーダーに、理化学研究所と先端医療振興財団の共同により世界初の臨床研究がおこなわれたのは、昨年9月12日のこと。移植1例目となる手術を受けたのは、既存の薬物治療などでは効果が確認できない重度の『滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性』を患う70代の女性でした。

この女性の場合、腕から直径4mmの皮膚を採取し、6種類の遺伝子を組み入れる方法でiPS細胞を作製。さらに特殊なたんぱく質を加えることで網膜組織の一種『網膜色素上皮』に変化させ、およそ10カ月の培養期間を経てシート状の移植組織を完成させました。

こうしてできあがった「網膜色素のシート」を長さ3mm、幅1.3mmの短冊形に加工し、病巣に移植するというのが、この時おこなわれた手術です。

ではなぜ、黄斑の病気である加齢黄斑変性の患者に『網膜色素上皮』を移植することになるのでしょうか?

画像3
出典:Taylor Retina Center – Macular Degeneration

“ウエット型”と呼ばれる『滲出型加齢黄斑変性』の場合、その多くが色素上皮の下にある「脈絡膜」から発生した新生血管によって引き起こされます。

新しく発生したこの血管を『脈絡膜新生血管』と呼びますが、もちろん網膜の下に不要な血管が生じた病態は正常ではありません。この新生血管の発生の原因が、加齢による網膜色素上皮の機能低下によるものだと考えられているのです。

滲出型加齢黄斑変性は、この新生血管からの出血や滲出物により、視細胞機能がダメージを受けることによって起こります。したがって、滲出型加齢黄斑変性の治療としておこなわれる治療法の多くが、新生血管の拡大を抑えることを目的としたものとなります。

いずれも視力の維持や病の進行を抑えることはできても、根治させることに有効な治療法とはいえないのが現状です。

画像4
出典:The Japan Times – Japanese government panel OKs world’s first clinical research using iPS cells

そこで臨床研究としておこなわれたのが、異常をともなう新生血管を取り除き、代わりに培養した結膜色素のシートを移植するという手術です。

じつは、結膜色素上皮細胞は視細胞のメンテナンスにとって重要な役割を持っており、新生血管の原因となる、古くなった視細胞を消化する役目をもっています。

つまりiPS細胞由来の結膜色素シートを移植することで、加齢により衰えた細胞を再生することができるのです。まさに再生医療への応用が期待されているiPS細胞の利点をいかした手術といえるでしょう。

臨床試験その後

それから1年後、臨床手術1例目の被験者となった70代女性について、その後の経過が報告されました。それによると女性に合併症などの発生はなく、移植した色素細胞シートも所定の位置にとどまっており、術後の状態は良好とのことです。

今後、iPS細胞による加齢黄斑変性の治療はますます研究が盛んになることが予想されており、現在もiPS細胞由来の視細胞を含む『懸濁液(けんだくえき)』を病巣に注入し、生着させる治療法などの研究が進められています。

いずれにしろ、今後の再生医療に大きな一歩を進めた今回の移植手術の意義は大きく、根治治療の困難だった数多くの患者に大きな希望を与えています。

▼『加齢黄斑変性』については、こちらから
加齢黄斑変性とは?(ロート製薬 商品情報サイト)
欧米では失明原因の第1位!日本人にも 増殖中の『加齢黄斑変性』ってどんな病気!?
中高年になると増える目の病気 『加齢黄班変性症』セルフチェック

【参考】
神戸新聞 – iPSから網膜細胞 世界初の移植手術実施 神戸
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201409/0007324118.shtml
株式会社ヘリオス – 加齢黄斑変性の治療方法開発
https://www.healios.co.jp/development/amd/
Logmi(ログミー) – iPS細胞がついに初の臨床試験へ! 担当医師が語る、”夢の技術”の現在
http://logmi.jp/15387

目ディア

この記事が気に入ったら
いいね!してね♪

関連記事

RELATION POST

  • Amazon ロート製薬
  • ロートV5粒
  • ロートVアクティブ
  • ロートV11 目を酷使する人のつらい疲れ目に。
目ディアの最新情報をチェック!
  • 目ディア facebook
  • 目ディア Twitter
  • 目ディア RSS
ページ上部へ