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どうして人は「顔」を覚えられるの? 記憶の謎に迫ってみた

どうして人は「顔」を覚えられるの? 記憶の謎に迫ってみた

人が社会生活を送る上で、顔を見分けることは極めて重要な能力です。しかしその一方で、私たちの顔識別能力が曖昧な側面を持っていることも事実です。

例えば「壁のシミが顔に見える」など、人が顔を認知する能力には非合理ともいえる側面があります。

私たちは、どうして人の顔を覚えられるのでしょう?その謎に迫ってみました。

人は顔を「図形」として認識する?

生まれて間もない赤ちゃんに単純化した顔のイラストを見せたところ、赤ちゃんが最も注視したのは目と口の部分だったそうです。しかし生後間もない赤ちゃんの視力は、0.03にも満たないきわめて乏しいものです。

その赤ちゃんが目と口の配置に反応したことは、どういう意味を持つのでしょうか?

顔をどうやって記憶するか_02

例えば、3つの点を逆三角形に配置した図形「∵」が顔に見える目の錯覚を「シミュラクラ現象」と呼びますが、赤ちゃんが目と口に反応したという事実は、それと同様の情報処理が赤ちゃんの脳でもおこなわれていることを示唆しています。

実は人の脳には「顔反応性細胞(顔細胞)」と呼ばれる神経細胞の領域があり、この顔細胞が図形のように配置された単純なパターンにも強く反応することがわかっています。

赤ちゃんの場合、この顔細胞が働きはじめるのは生後2週間頃だと考えられていますから、そもそも人の脳が顔を識別する過程において、目と口の配置こそが本来的に重要だと考えることができるのです。

▼赤ちゃんの視覚についてなら、こちらもオススメ!
赤ちゃんの「視覚」の不思議 どうやって人の顔を見分けているの?

人が顔を記憶できるのは、「顔領域」と呼ばれる一連の脳の働き

私たちは大切な人の顔を決して忘れないものです。しかしその記憶は、脳の顔領域と呼ばれる領域に一時的に蓄えられている記憶に過ぎません。

この顔領域が示す反応の違いは、人の顔をうまく識別できない「相貌失認(そうぼうしつにん)」の人たちにも顕著であるといわれています。

顔をどうやって記憶するか_03
出典:Sabías que? – Prosopagnosia: la incapacidad para reconocer rostros

人の脳は“顔認識”に関わる部位と“物体認識”関わる部位とが異なる領域に存在しており、互いの領域が協調関係にあることが明らかになっています。

相貌失認の症状を持つ人の場合、手や足の形、髪形や服装などでその人を識別することはできますが、顔そのもので識別することができません。個々の顔のパーツは知覚できるものの、それを全体として「1つの顔」として区別することが困難なのです。

つまり相貌失認の人の場合、この物体認識の働きが正常でも、顔認識の働きが弱いと考えることができるのです。

しかし私たちの脳は本来的に相貌を失認する可能性を持っており、そのことを疑似的に体験する方法を持っています。それが「倒立顔効果」です。

人は顔が逆さまだと判別できない?

倒立顔効果は、別名「サッチャー錯視」と呼ばれており、以前に目ディアの記事でご紹介したことがありました。

▼サッチャー錯視について詳しく知りたいなら、こちらのコラムを!
さかさまだと顔の違いはわからない?「サッチャー錯視」の仕組みって?

サッチャー錯視とは、「人の顔を上下逆にすると細部の変化がわかりにくくなる」という現象です。もちろんこの現象は、シミュラクラ現象における「目」と「口」の位置関係とも無関係ではありません。

顔をどうやって記憶するか_04
出典:Scientific American – Illusion of the Week: The Margaret Thatcher Illusion A Retrospective

試みに、先ほどの図形を逆さまにしてみましょう。すると、「∴」が顔として見えてしまうことは、もうありません。人の脳は正立した顔に対しては物体認識に関わる脳の領域が抑制され、倒立した顔に対しては顔認識の領域が抑制されるからだそうです。

つまり、人は顔を逆さまに見ることで、脳が顔を“物体”として処理する一種の相貌失認状態になっていると考えられるのです。

人は「非言語的記憶」として顔を覚える

実は、人の記憶は「潜在的記憶」「顕在的記憶」に分けることができると考えられています。

潜在的記憶とは、意識せずとも体や脳が反応してしまう記憶です。例えば自転車の運転などは、多少のブランクがあっても体が記憶していますよね。こうした身体的な記憶を含むものを「潜在的記憶」と呼びます。

一方の顕在的記憶とは、頭で覚えようとする記憶のことです。顔に対する記憶も、この顕在的記憶に分類されます。

顔をどうやって記憶するか_05

そして顕在的記憶は、さらに「言語的記憶」「非言語的記憶」に分けられます。

言語的記憶は“言葉で表せる記憶”、非言語的記憶は“言葉では表しきれない記憶”です。例えば参考書で覚えた年号や単語などは言語化することが容易であり、これらの記憶は「言語的記憶」に分類されます。

しかし一方で、旅先や初恋の思い出などは抽象的であり、言語化することが困難です。こうした記憶が「非言語的記憶」として分類されるのです。

では、私たちが人の顔を覚えることは、どちらに分類されるのでしょうか?

当然ながら、人の顔はA+Bのように単純に言語化することはできません。モンタージュ写真のようにタイプ別に分類することは可能ですが、個々の顔を「その人の顔」だと判断することは、極めて感覚的な領域にゆだねられています。

したがって、私たちが人の顔を記憶することは「非言語的記憶」によるものと考えることができるのです。

人の顔を覚える「超能力」を持つ人々がいる?

最後に、人の顔を驚異的な精度で記憶できる人々のことをご紹介します。それが『スーパー・レコグナイザー』と呼ばれる人々です。

スーパー・レコグナイザーとは、相貌失認とは真逆の“超相貌識別能力”を持つ人々のことで、この概念は2009年に米ゲティスバーグ大学の心理学者リチャード・ラッセル氏により提唱されました。

スーパー・レコグナイザーは、数ヶ月前に偶然同じ店に居合わせただけの人をすれ違いざまに特定できるなど、驚異的な顔識別能力を持っています。

彼らのような特殊能力を持つ人物は、実は以前から犯罪捜査の現場で重用されてきました。日本では「見当たり捜査官」と呼ばれる人々がそれにあたり、彼らは常時数百名という指名手配犯や容疑者の顔を記憶することで、目的の人物を雑踏の中から一目で見つけ出すことができるのだといいます。

そして彼らが人の顔の特徴として第一に挙げるのが、「目」なのだそうです。

彼らのような超相貌識別能力がなぜ起こるのかは、はっきりしていません。しかし、側頭葉の「紡錘状回(ぼうすいじょうかい)」という部位にある顔領域が大きく関わっているのではないかと考えられています。

顔をどうやって記憶するか_06

人が人の顔を判別し、記憶するメカニズムは非常に複雑です。ただし私たちは、大切な人のことを顔だけで記憶しているわけではありません。

大切な記憶や、思い出の中に生き続ける人の記憶は、きっと私たちの人生を豊かにしてくれるはず。私たちは、脳科学だけでは解明できない存在なのかもしれませんね。

▼脳がおよぼす「記憶」や「感覚」の不思議をもっと知ってみよう!
一度見ただけで瞬時に覚えられる! 不思議な能力「カメラアイ」とは
音に色や温度を感じる 「共感覚」が不思議すぎる!
「口で形を見ている」ってどういうこと? 赤ちゃんの見る世界とは
目の機能や動きは関係あるの?今より10倍速さえ可能にする「速読」!

▼人の顔が見えづらいのは、疲れているのかも?
目のトラブルについて~眼精疲労/疲れ目~(ロート製薬 商品情報サイト)

【参考】
SP速読学院 – 身体の記憶と頭の記憶
http://www.pc-sokudoku.co.jp/txt/speed/speed15.html
脳の仕組み和わかりやすく解説 – 記憶は2種類ある
http://www.js-brain.com/kioku/
大阪大学大学院生命機能研究科 – 顔の特徴を伝える2つの脳内過程
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/events/achievement/reference/
キャリアインキュベーション – 「見当たり捜査官」の識別能力~スーパー・リコグナイザー
http://www.careerinq.com/blog/mitani/2014/05/002306.shtml

目ディア

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視力0.1の人にはこう見える!? 近視の人が見た世界を再現する絵画が幻想的

視力0.1の人にはこう見える!? 近視の人が見た世界を再現する絵画が幻想的

出典:Philip Barlow – Paintings

視力矯正器具を必要としない正常視力の人たちには、決して見ることのできない世界の姿がありました。
南アフリカ出身のアーティスト、フィリップ・バーロウ氏は、視力0.1以下の人たちのフィルターを通して世界を抽象化しようと試みています。
一見するとフォーカスのあまい写真のようですが、どこか遠い記憶の再現のようにも感じられ、幻想的に心に響きます。

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

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出典:Philip Barlow – Paintings

フィリップ・バーロウ氏は、1968年に南アフリカのピーターマリッツバーグに生まれました。写真家としての顔も持つ彼が、独自のスタイルの絵画を描きはじめたのは2002年ごろだそうです。
それ以前には、各地の壁画を描くなどの活動を続けていたそうですから、こうしたスタイルに目覚めたのには写真家としてのひらめきがあったのでしょうか。
しかしアウトフォーカス写真のようでありながら、乱反射する光の束や抽象的な風景のとらえ方など、やはり写真とは異なるアプローチで描かれていることがわかります。また逆光気味の絵が多いのも、光の粒子をとらえようとする彼のスタイルかもしれません。

“視力”というフィルターを通すことで、世界にはさまざまな個性により異なる彩りが存在することを再認識させられます。このような作品を生みだすためには、やはり卓越したアーティストの“目”が必要なのでしょうね。

▼最近物が見えづらい…それってもしかして老眼かも?
年齢とともに起こる目の機能低下とは?(ロート製薬 商品情報サイト)

【参考】
Philip Barlow – Home
http://www.philipbarlow.com/

目のテストに挑戦!

下記のカラーチャートに何種類の色が使われているか、あなたは見分けることができますか?

tetrachromacy2_02
答えはこちら!!

見えた色の数によってはもしかしたら、あなたは「4色型色覚者」かもしれません!

目ディア

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