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さかさまだと顔の違いがわからない? 「サッチャー錯視」の仕組みって?

さかさまだと顔の違いがわからない? 「サッチャー錯視」の仕組みって?

顔が上下さかさまになるだけで、目や口に加えられた変化に気が付かない――。そんな現象のことを『サッチャー錯視(さくし)』と呼びます。

錯視にはさまざまな種類がありますが、人の顔という極めて身近な存在に起こる錯視は、とても不思議なものです。そこで今回は、サッチャー錯視の不思議と、その原因について調べてみました。

ひっくり返すことでわかる「サッチャー錯視」

サッチャー錯視という現象は、1980年にヨーク大学の心理学教授ピーター・トンプソン氏の報告により広く知られるようになりました。トンプソン氏は“鉄の女”と呼ばれた当時のイギリスの首相マーガレット・サッチャー氏の顔写真を使用して、サッチャー錯視の存在を証明したのです。

サッチャー錯視_02
出典:Scientific American – Illusion of the Week: The Margaret Thatcher Illusion A Retrospective

この画像がトンプソン氏の作成した写真ですが、左右の顔を見比べると、おかしな点に気づきます。というのも、左の写真ではサッチャー氏の目と口の部分が上下反転してコラージュされているからです。

ではこの写真をひっくり返してみると、どうなるでしょうか。

サッチャー錯視_03
出典:Scientific American – Illusion of the Week: The Margaret Thatcher Illusion A Retrospective

なんとなく、さきほどの画像と比べて違和感がやわらいだと感じませんか?これが「サッチャー錯視」と呼ばれる視覚現象です。

わかりやすくするために、もう一枚の画像をご紹介します。

サッチャー錯視_04
出典:HUH. – Visual Illusions by Blommers Schumm for Dove

先ほどのように、上下がさかさまに配置された女性の画像です。一見したところ特に違和感を覚えることはありませんが、画像を上下反転させると驚くべき変化が現れます。

サッチャー錯視_05
出典:HUH. – Visual Illusions by Blommers Schumm for Dove

実はこの写真でも、サッチャー氏の写真のように目と口が上下逆に加工されていたのです。

どうでしょう?最初にさかさまの写真だけを見た時は、それほどおかしいと感じなかったのではないでしょうか?

では、どうしてこのような現象が起きるのでしょうか?

サッチャー錯視には心理的な過程が働くことが影響していると考えられてきましたが、具体的な理由については明らかにされてきませんでした。しかし近年になって、サッチャー錯視の起こる理由脳の神経系の働きによるものだということが明らかにされたのです。

日本の研究が解明した「サッチャー錯視」の仕組み

人の顔を見分けるためには、目や鼻、口や髪型など、それぞれの顔が持つ要素を解析する能力が必要だと考えられてきました。事実、人の顔を見分けることのできない「相貌失認」の患者にはサッチャー錯視が起こらないことが知られていましたし、このことからも脳の特定の部位が顔を見分ける能力に影響していることがわかります。

そこで、サッチャー錯視の仕組みの解明を脳科学によるアプローチでおこなおうと試みたのが、産業技術総合研究所(産総研)と筑波大学、京都大学による共同チームです。

チームはサルの脳を調べることで、サッチャー錯視や顔を見分けるための脳の働きの分析をおこないました。すると、さかさまの顔を見せられることで、側頭葉にある視覚連合野が処理する情報から、顔の個体差や表情の変化を識別するための情報量だけが減少することがわかったのです。

サッチャー錯視_06
出典:Science2.0 – Monkey And Man – The Thatcher Illusion And Facial Recognition

この研究により、通常の顔とさかさまの顔とでは影響を受ける神経細胞が異なっていることが示唆されました。これはサッチャー錯視においても同様で、正立した顔とさかさまの顔を見る時とでは異なる神経活動がおこなわれており、この処理領域の違いがサッチャー錯視を引き起こしていると考えられるのです。

それにしても、サルにもサッチャー錯視が起こるなんて驚きですね。ちなみに産総研によると、今回の研究を相貌失認の治療や、認知症を抑止する技術開発の手掛かりを得るための脳内メカニズムの解明につなげていきたいとのことです。

知らない内に脳が騙される、不思議な現象。まだまだ、私たちが何気なく見落としている錯覚がたくさん転がっているのかもしれません――。

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【参考】
Wikipedia – サッチャー錯視
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E9%8C%AF%E8%A6%96
産総研 – 上下逆さに顔を見せると見分ける能力が低下する仕組みを解明
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20141010/nr20141010.html

目ディア

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“目の色”が違えば“見える色”も違う!?
眼科医が教える目の不思議

“目の色”が違えば“見える色”も違う!?<br />眼科医が教える目の不思議

黒い瞳と青い瞳……。
瞳の色は、顔の印象を大きく左右しますが、その違いって、外側から見える色だけ?
瞳の色が違うなら、見える色も違ってくるのではないか?
素朴な疑問を眼科医・岡野先生にぶつけてみると、納得!の答えが見えてきました。

見え方の違いに迫る第一歩!そのカギを握るのが「眩しさ」

ラグビーワールドカップの真っ最中。
プレイを見ていると、目の下に黒いシールを貼って挑む、白人選手に気がつきます。
これは「アイブラック(Eye Black)」などと呼ばれ、日本人選手がつけていることもありますが、とりわけ欧米人選手に多く見られるのは、「アイブラック」が、眩しさを軽減させるアイテムだからです。

eyecolor_02

出典:Wikipedia−『Eye black』

サングラスを例にしても、日本人に比べ、欧米人のほうが、圧倒的に利用率が高い。
日本人の場合、ファッション目的のためにサングラスを掛ける人が少なくありませんが、欧米人は、日差しが降り注ぐ炎天下にサングラスなしでは、眩しくて仕方がないのです。

目の色を決めるのは「虹彩」に含まれる色素量!多いほど黒みが強い

眩しさは言うまでもなく、目から伝わる刺激において、日本人と欧米人との間に感じ方の差が生じるワケは、目の色の違いにあります。

eyecolor_03

出典:Wikipedia−『虹彩』

目の色はそもそも、目の内部にある「虹彩」という組織の色で決まります。
虹彩に含まれるメラニン色素の量が多ければ多いほど、黒みを帯びた色となるため、欧米人に多い青や緑色の瞳に比べ、日本人に多い黒みの強い瞳のほうが、色素量が多いことになります。
この虹彩、目に入ってくる光の量を調整する役目を担っていますが、黒みが強いほうが光を通しづらいという特徴があるため、日本人のほうが、眩しさに強いのです。

例の画像を見れば納得!光の調節量が違えば、見える“色”も違ってくる

さて、「目の色の違い」と「感じる眩しさの違い」についてお話ししましたが、感じる眩しさが違えば、見え方にも多少、違いが生じます。

eyecolor_04

出典:WIRED−THE SCIENCE OF WHY NO ONE AGREES ON THE COLOR OF THIS DRESS

少し前にネットで話題となり、この『目ディア』でも取り上げた画像。
これは脳のバイアスによって、色の見え方が異なるといったカラクリですが、画像の明度を変えてみると、実際の色も変わっていきます。
前述の通り、目の色を決める虹彩は、光の量を調整する組織ですから、目の色の違いによって内部に入ってくる光の量が変われば、見える色が若干、異なったとしても不思議はないのです。

ISOの実験で明らかに?青い瞳のほうが、赤い色をよく見分ける!?

もう一つ、虹彩による光の調節量とは別に、虹彩の色=目の色そのものが、見え方を左右させるといった説があります。
多くの分野において、国際的な標準規格を定める国際標準化機構(ISO)がおこなった実験によれば、「黒い目よりも青い目の方が、赤い色については、4倍の色素視感力があるらしい」という結果が出たと言うのです。

語尾の「らしい」が示す通り、その理由は、はっきり解明されていません。
岡野先生は、虹彩の色そのものが、一種の“色メガネ”のような役割を果たしているのではないか?と推察しているそう。

青い瞳=青い虹彩を持つ人は、青いサングラスをして世界を見ている!?

eyecolor_05

“色メガネ”と言っても、慣用句の話ではありません。
例えば、黄色い色をしたサングラスをかけて世界を見ると、黄色いモノや、何色にも染まることができる白いモノは、サングラス通りに黄色く見える一方、赤や青の色みを持つモノのほうが、かえって際立って見えます。

つまり国際標準化機構の言う、「青い瞳のほうが、赤い色について、4倍の色素視感力がある」というのは、青い色のサングラスをかけて世界を見ている状態。
大げさに言ってしまえば、虹彩の色と同化する青とは別の色、すなわち赤い色が、際立って見えているということではないか?という推察です。

ただ、目に見えている色は、見ている“その人自身”にしかわかりません。
同じ瞳の色を持つ日本人同士であっても、信号機の横断OKを示す色を「青!」と言う人がいたり、「緑!」と言う人がいたりと個人差があるのと一緒。
見る人によって、感覚や表現に違いがあるため、そもそも「この色は何色なのか」、一つの答えなんて存在しないのです。

▼日本人と欧米人の目の違いについてはこちら
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うさぎの目はなぜ赤い? 日本人の目は焦げ茶が多い? 瞳の色の違いには理由があった!
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▼目の錯覚による見える色の違いについてはこちら
同じ色なのに違って見える!? 驚きの錯視と色の世界
モノクロ写真がカラーに見える!? 残像を利用した『色錯覚』動画がおもしろい!

▼目の色を変えるといえば「カラコン」!正しく利用できていますか?
知らないと怖い!カラーコンタクトレンズとの正しい付き合い方(ロート製薬 商品情報サイト)

取材・文/大谷享子
目ディア

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